心を軽くする一つの方法:「馬鹿をやってみる」

私たちの人生には、次々に困りごとが起こります。思うようにいかず落ち込んだり、行き詰って絶望的な気持ちになったり、疲れ果てたり・・・ネガティブ・モードから抜け出すのが難しいことがありますよね。

今日は、そんなときのひとつの解決策、「馬鹿をやってみる」と言うことについてのお話です。

「馬鹿をやる」・・・「道化になる」と言い換えてもいいかもしれません。

道化になること

道化とは、サーカスで言うと、ずっこけたり、失敗したりして笑いをとるピエロですね。

サーカスには、必ずピエロがいます。手に汗握るアクロバット芸の合間に、ピエロが登場して、いろいろと馬鹿なことをやって見せることで、観客は緊張を解き、ホッと一息入れることができます。

この「息を抜く」ということなしには、きっとサーカスを最後まで楽しむことはできないでしょう。

このピエロ的存在:道化を、別の名称でいうと「トリックスター」

著名な心理学者ユングは、「トリックスター」を、人の心に重要な存在だとしていました。
他にも、多くの心理学者や心理療法家が、「トリックスター」を膠着した事態を打開する存在として重視しています。

トリックスターとは

トリックスターは、神話や民話に、たびたび登場します。
彼らは、社会の秩序を乱すいたずらもの。常識を軽々と飛び越え、「普通やらないだろ」という無茶をポーンとやってしまう。
大混乱を巻き起こす一方、それが人間に知恵とか役立つ道具をもたらします。

歌川国輝「本朝英雄伝 牛頭天皇 櫛田姫」

 

日本神話ではスサノオが有名ですね。

彼はヤマタノオロチを退治して人々を救うヒーローですが、実は度を越したいたずらものです。

天界では田んぼの水路を埋める、ウンコをまき散らす、馬の皮をはいで投げ込むなど、やりたい放題。女神を面白半分に殺すことまでやらかし、姉のアマテラスに愛想をつかされています。天界を追放されたあとも、全く懲りず、滅茶苦茶なことをやらかしまくっていました。

スサノオは、世界を破滅させたり救済したりする、強大なパワーをもったトリックスターです。

でも、こんな過激なのばかりじゃなくて、もっとほんわかしたトリックスターもいます。

代表格は、グリム民話の「しあわせハンス」かな。

ハンスは正直で働き者の青年ですが、あまり賢くありません。奉公先の主人から、報酬として大きな金塊をもらうのですが、故郷へ帰る途中、「重くて困ってるなら交換してやろう」とかなんとか、出会った人の口車に乗せられて、金塊を馬と取り換えてしまいます。さらに馬を牛と取り換え、牛をまた別のものに取り換え・・・を繰り返していき、常識的に見ればハンスは大損をしているのに、彼は「ああよかった」「ああ助かった」と大満足なのです。

馬鹿だなあ・・・と思うけれども、「人生で大切なのは経済的な豊かさじゃないんだよね」なんて、しみじみ考えさせられるお話になっています。

ハンスはその愚かさによって私たちの世界観を変える働きをしていています。お馬鹿さんなハンスもまた「世界を壊し、救済する」ということをしている存在なのです。

このように、鹿だなあ・・・という言動によって、価値観を変えさせ、凝り固まっていた思考をほぐしてくれるのが、トリックスターです。

「トリックスター」を取り入れる

頑張って頑張って、にっちもさっちもいかなくなっている時、ぜひ生活に「トリックスター」を取り入れてみましょう。

常識をひっくり返すトリックスター的な部分を取り入れる。そうすることで、私たちは、硬直した事態を新しい視点で見たり、息抜きをして元気を取り戻したりすることができます。


では、「トリックスター」を自分に取り入れるって、どうやるのでしょうか。

それは、ちょっとだけ「馬鹿なことをやってみる」ことです。

昔、祭りのときだけは無礼講で、馬鹿なことをやったり、羽目を外したりすることが許されていたのは、人々の「生きる知恵」だったのでしょう。その日だけはトリックスター的な存在になって、ガス抜きをする。それによって、人々は、また苦しいことの多い日常に帰って行くことが出来たのだと思います。

 

でも、「馬鹿なことをやるのが心の健康に役立つ」と言ったって、思いっきり羽目をはずすというのは、現実生活ではリスクが大きいですよね。スサノオみたいなことをやらかしたら犯罪だし、犯罪まではいかなくても、「何、あの人・・・」と、やばい人認定されるのは、まずいです・・・。

「アート遊び」でトリックスターを

そこで、お勧めしたいのが、「アート遊び」です。

結果を気にせず、「綺麗に仕上げよう」なんて思わずに、画材や材料と戯れてみるのです。

例えば、こんなグチャグチャ描きでかまわないのです。

 

下の写真は、いろんなガラクタの寄せ集めです。何かを作ろうなんて思わずに、いろいろ並べたり、組み合わせたりしているうちに「生まれてきた」って感じのものです。

このアートのプロセスについては、別の記事に書いていますので、よかったらご覧ください。

 

幼稚だなーと思うようなことでいいのです。「へのへのもへじ」でも何でも。
たぶん、初めのうちは、楽しめなかったり、こっぱずかしい気分になったりすると思います。でも、これも、慣れです。すぐにやめてしまわず、ある程度時間をかけて、「あほらしいこと」をやってみてください。
慣れないうちは、自分の中の「トリックスター」が動き始めるのには、時間がかかります。

アートセラピーのすすめ

「自分の中のトリックスターと出会うアート」。もし可能であれば、訓練を積んだアート・セラピストと一緒に取り組むことをお勧めします。

自分だけでやってみることも、もちろんいいのですけど、自分一人でやっていると「何やってんだろ、私・・・」なんて思って、早々にやめてしまう・・・てことになるかもしれません。また、万が一、スサノオ級の激しい破壊衝動が出てきた場合にも、セラピストがそばにいれば安全に対処することができます。

 

私、名田文子は、アートセラピストであり公認心理師でもあります。興味を持った方は、ぜひ声をかけてくださいね。

 

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