
自分が何をしたいのかわからない。
そんな悩みを抱えている人は、けっこう多いのではないでしょうか。
自分で選択する機会を与えられず、あらかじめ決まっていることに従う経験の連続であることが、その原因だなんて、よく言われています。
理由はともかく、「何がしたいかわからない」という状況は、自分を不安定な気持ちにさせますよね・・・。
今日は、自分で自分の気持ちに気づいて決断するために効果的な、ひとつの方法をご紹介します。
人生の選択は、消去法でいい

「何がしたいか」という望みよりも、
「これは無理、これは苦手」と消去法で考えて、振るい落されて残ったものが自分の人生を決めている・・・という人は、かなりいるんじゃないでしょうか。
私は、自分が本当に願っているものがわからない という場合は、
物事の決断は、この「消去法」でいいんじゃないかと思っています。
つまり、「これは絶対いやだ」というものをふるい落とし、「これはキライじゃないな」というものを残していく。これで充分じゃないかと思うんです。
むしろ、「これこそわが望み、これされあれば私の人生、他に何もいりません!!」なんていう一本道を選び取れる人の方が特別じゃないのかな。
「これこそ最善!!」って人生を単純化・先鋭化する必要は全然なくて、
「なんとなく居心地がいいな」という時間を増やしていくことがだいじなんじゃないかと思っています。
選択を求められると凍ってしまう

一人の女の子の話をさせてください。仮に名前をNちゃんとしましょう。
Nちゃんとは、私が小学校の図工教師として勤めていた時に出会いました。
Nちゃんは、何かを決めるということが、とても苦手でした。
低学年の頃はそうでもなかったのですが、年齢が上がるにつれて、図工の時間になかなか活動にとりかかれず、長い時間固まっている姿が目につくようになっていきました。
思いつかない。どうしていかわからない。
指示されない自由というものに、大きな不安を感じていたんだと思います。それはほとんど、恐怖に近いものであったかもしれません。

さて、小学校6年生で取り組む図工題材の定番に、将来の自分の姿を作品に表すというのがあります。
教科書には「20年後の私」っていうタイトルで掲載されていたりします。そして、「サッカー選手になってシュートを決めている自分」とか、「花屋で花束を作っている私」などの様子を、絵に描いたり、紙粘土などを使って立体作品にしたりするんです。
Nちゃんが、この題材で固まってしまうことは、容易に予想できました。
でも、実は、この題材は、Nちゃんに限らず、「自分の将来の姿なんてわからない」と苦しい思いをする子がけっこう出るんですよね。
それはわかっているので、私は、「職業みたいに、人生を左右するようなことじゃなくていいよ。興味があってやってみたいな~っていう程度のことでいい」というふうに、子どもたちに話していました。
こういう「軽い内容」を提案したことで、「パリに旅行に行ってみたい」とか「芸能人の〇〇に会いたい」とか、そんな夢物語を表現する子が現れて、重すぎず悩みすぎずに取り組むことができたと思います。
また、具体的な事柄じゃなくて「気分、気持ち」を表すことも奨励したので、抽象的な表現で表した子もいました。
でも・・・、Nちゃんは、凍ったままでした。
自分の気持ちを知るための「くじ引き」

それで、私はNちゃんに、ある方法を提案しました。
その方法とは・・・「くじ引き」です。
「自分で決められないんだったら、運命に決めてもらおう。ただし、いやだと思う運命には逆らっていい」。
私がそう言うと、行き詰っていたNちゃんは、不承不承といった感じで、くじ引き法の導入に同意しました。
最初に、Nちゃんに、「職業のことを作品にするか、趣味に関することを作品にするか」を決めてもらいました。ここは、Nちゃんは「趣味の方にする」と、自分で決めることができました。
次に、メモ用紙に、世間で誰かが趣味としてやっていることを、1枚につき1つ、記入しました。
書く内容は、Nちゃん自身の興味関心とは無関係です。「ゲーム」「読書」「編み物」など、Nちゃんに思いついたことを言ってもらい、私が書き込みました。
ここも、自分のことではないので、Nちゃんは言うことができました。私もいくつか挙げて数を増やし、10枚か15枚くらい用意したと思います。
そして、メモ用紙を畳んで中が読めないようにして、Nちゃんに1枚選んでもらいました。

このくじ引きのポイントは、「引いた内容がいやだったら、却下していい」というところです。
初めに引いたくじの中身を見たNちゃんは、「え。」と言って顔をしかめました。
「いやなんやね。」と確認すると、Nちゃんは「いやや」と答えます。
「どうする?いやでもやる?それとも却下?」と尋ねると、Nちゃんは、それを除外しました。
「これはいらない、って、自分で選べたね。」(この経験をしてほしかったので、私はわざと、彼女が好みそうにないもの:例えば「マラソン」等を入れておきました)
そして、また次の1枚を引くのです。
こうして、何枚も、引いては却下・・・が続きました。
そして、「お菓子作り」の札を引いたとき、Nちゃんは「これにする」と言って、選ぶことができたんです。

テーマを決めることができると安心したのか、そのあと「何のお菓子を作っている様子にするか」等の具体的なところのアイデア出しはこれまでが嘘のようなスムーズさ。(ちなみに、この時点で、彼女はお菓子作りの経験はありませんでした。)
取り掛かるまでに時間がかかったので、制作時間が授業だけでは足りなくなってしまったのですが、
Nちゃんは放課後の図工室に連日通って、作品を仕上げることができました。
もう10年くらい前のことになります。Nちゃん、元気かなあ・・・
答えを知っているのは、頭ではなく身体

もしあなたが、自分の望みがわからない、決断ができないという状況であれば、この「くじびき法」は、お勧めです。
くじ引き法による選択では、頭ではなく、身体が「適・不適」の判断をしてくれるんです。しかも、瞬時に。
どうしてそんな判断が可能になるのかというと、
くじ引きで、選んだものが手元に来るということは、その状況に自分の身を置くというイメージ体験になるのだと思います。
すると、それが自分に適していないものだったときは、「あ、いやだ」って、不快感が、身体の感覚として出ます。
人との相性でいう「生理的にイヤ」ってやつに近いかもしれません。

「いやだサイン」が出たら、それは却下。選択肢から排除します。
これでひとつ選択できたことになります。
身体の感覚は正直です。漠然と考えていた時には気づかなかった、自分の望みや好みにマッチしているかどうかの判断が、一瞬で働くんです。
大事なことは、「いやだ」というサインを見逃がさないことです。
胸がザワっとするとか、胃が重いとか・・・どんなサインかはそれぞれでしょうが、選んでみたときに不快感や違和感が身体に出たときには、それをちゃんと見てあげてください。
それでも決断に迷うとき

くじ引き法で消去していって、同等の「嫌じゃない」がいくつか手元に残り、どれを取ればいいのか迷ったなら、
それはもう、どっちを選んでも大丈夫ってことですよね。それこそ、くじ引きとか、状況とかの運命任せで、問題ないんじゃないですか。
それに、人の気持ちも状況も、変化していくものですから、今決めたことを永遠に変えてはいけないってわけじゃない。そのとき、そのときの自分の気持ちを、大切にしていきたいですね。
アートによる「くじ引き法」

今日は、自分の望みや願いがわからないときや、決断に迷うときに役立つ方法をお伝えしました。
今回は、選択肢を文字で書く「くじびき」の紹介でしたが、
これを写真や絵などのメディアを使って行う「コラージュ」という方法もあります。直感で写真を選び、紙に貼っていくというもので、自分で自分の思いを「見える化」することができる、とてもパワフルな方法です。
コラージュに関しては、よかったら以下の記事を合わせてお読みください。

