
「図工や美術が苦手だった」という方が、その理由として挙げるもののひとつが「何も思いつかない」というものです。
何を描けばいいんだろう?と途方に暮れ、真っ白な紙をみつめて「うーん」とうなってみるけど、何も出てこない。これは苦痛ですよね。
実はこの「始める前に考える」というやつが、「苦手」を増長させる根源なのです。
考えるよりも、とにかく始めてしまう。これが、アートを楽しむコツ!
今回の記事では、「思いつかない」から解放され、創造的な自分と出会うアートについてご紹介します。
(「美術」というと固い感じがするので、今後は「アート」という語で話を進めますね)
苦手な人でも「これならできる」と思えるアート

私は、現在、公立学校での美術の教員というのを生業にしています。勤務先は特別支援学校なので、授業中、メインで授業を進める私の他に、数名の教員が「支援者」として教室にいます。
そして、「こんな美術の授業なら、私は美術が好きになっていたと思う」と言ってくださる先生が、少なからずおられます。
「難しく考えなくても、自然に作品になる」
「面白い!」
こんな感想をいただくんですよね。「そうでしょ、そうでしょー!」と、ニンマリしている私です。
アートは「出たとこ任せ」

私は、アート制作は、気分任せの散歩みたいなものだと思っています。
例えば、街歩きをするときには、迷わず最短・最適ルートで目的地にたどり着こうとする場合と、特に目的を定めず「こっちに行ってみようかな」って感じで巡る場合とがあると思います。
「こっちに行ってみようかな」式の街歩きが、いわゆる「散歩」ですよね。迷わず決まった道を行くというよりも、むしろ「積極的に迷っちゃおう」というような歩き方。
私は、この「気まま感」「出たとこ任せ感」が、アートを楽しむコツだと思っているんです。
アートは手探りで進むもの

実は、プロの画家だって、あらかじめすべてを計画して作品を作っているわけではありません。
「これ」と思った色の一筆をキャンバスに置く。それを見てから、次にもう一筆同じ色を置くのか、ここで別の色を筆に載せるのかを決めていく。そういうことを画家は行っているのです。
かれがひまわりを描こうとしても、ゆるぎないすじみちがあたえられているわけではない。かれがカンヴァスに黄色の一筆をおき、その効果をたしかめてはじめて、これがつぎの細部をみちびくというのがほんとうのところだろう。厳密な意味で創造の現場とは、おそらくはこの、手と筆がカンヴァスに手探りでふれるふたしかな、未知の瞬間にあるといえようか。そして、われわれはふつうこのような瞬間を「タッチ(手触)」と呼んでいる。タッチは、個々の手技がカンヴァスにふれる瞬間の痕跡であり、画家の術とは、タッチからタッチへと手探りにすすむすじみちである。
(p.29「第2章「美しい芸術」と精神の美学」)「現代アートの哲学」西村清和 産業図書 平成7年
タッチからタッチへと手探りにすすむすじみち。
散歩で言えば、「このまままっすぐ行こうか」「この角で曲がろうか」とその時の気分を確かめながら、一歩、一歩、歩みを進めていくような、そんな感じですね。
ガイド任せではなく、自分で歩みを決める

世間には、お手本を示して、どんな色をどんな風に施すのか、事細かに指南するような絵画技法教室がいろいろあります。それはきっと、上手にはなるのでしょうし、うまく描ければ満足感もあるでしょう。
さっきの散歩の例えで言えば、現地を熟知したガイドさんに案内されて、お勧めの場所に間違いなく到着するパッケージツアーみたいな感じでしょうか。
ガイドさんが一緒だと、確かに心強いですよね。普通の人が知らない見どころも教えてくれたりするし。
だから、パッケージツアー式のアートも、悪くはないんだろうけど・・・・
「ガイドさんありがとう!」の旅ではなく、「私がこの風景を見つけた」という旅の方が、私は好きなのです。
創造性を目覚めさせるアート

私は「気ままな散歩」式のアートを、ぜひおすすめしたいのです。なぜならば、「本当に自分の中から生まれてきた表現」と出会うことができるから。
「やっているうちに、自然に出来上がってきますよ」という、この表現スタイルでは、指導者はきっかけづくりをするにすぎません。あとは、困ったときにちょっと相談に乗るとか、便利グッズを紹介するとか、そのくらい。「この作品ができたのは、先生のご指導のおかげです」とは、ならないんです。
「創造力」は、誰の内にも必ずあります。アート制作を通じて、「創造的な自分」と出会ってほしい。そう願っています。
目指すは「上手い絵を仕上げる」ではなく、「自分の創造性を目覚めさせる」です。
お勧めアートワーク
具体的なアートワークの例は、下の記事をご覧ください。ぜひ、「あらかじめ考える」をやめて、気ままな散歩のように、アート表現に取り掛かってみてください。
「上手・下手」というジャッジを超えて、きっと、自分で自分の創造力に驚くことができると思います。


