ちょっと立ち止まって・・・

子どもの頃、どんな大人になりたかったですか?

大人になった今、
私は、あのころ思い描いたような大人に、なれたんだろうか。

 

あなたはどうですか?
「こんな大人になりたい」と思っていたような大人に、なれましたか?
と、改まって聞かれると、
堂々と、「なれました!」と言える人って、いるのかな。

 

正直、そんなこと考える間もない、という人が多いんじゃないでしょうか。
でも、ここでちょっと立ち止まって、
「どんな大人になりたかったんだっけ?」と、
振り返ってみるのも、いいかもしれません。

子どものこころを思い出せる本

 

そんなときにお勧めの本が、
ケストナー作「飛ぶ教室」です。

本の表紙「飛ぶ教室」

「飛ぶ教室」っていうタイトルだから、
校舎が空を飛んで行って大冒険をするようなファンタジーかな と思ってしまいますが、
この作品には、魔法的要素は一切ありません。
ドイツの寄宿学校が舞台で、
13~14歳の少年たちの日常が、あたたかく描かれた作品です。

主人公は、少年たちなんだろうけど、
ケストナーはおそらく、同時に、
大人に向けて、この作品を書いているんだろうと思います。

まず冒頭部分。
ケストナーは、「大人になっても、子ども時代を、決して忘れないで!」
と書いています。
「子どもは、幸せいっぱいで、悩みなんてない」なんて、そんなことはない。
子ども時代の悲しみ、
子どもの涙は、大人の涙より重要でないなんてことはない。
それはとても大切なことなんだと。
子どもたちに「忘れないで」とメッセージを送りつつ、
大人に向かって「思い出して!」と語りかけているように感じます。

さて、
お話の前半は、他校の生徒とのトラブルが描かれます。
伝統的に対立関係にある学校の生徒に、
友達が拉致されるという事件が起きるのです。
これがけっこう酷い行状で、
ひとりをつかまえて地下室に閉じ込め、
ロープで縛り上げて、10分ごとにビンタをするという狼藉ぶり。
これはもはや犯罪ですよね!

でも、お話は、ドロドロ陰惨になっていくわけではありません。
狡さや裏切り,浅はかな残酷さなどを含みつつも、
あくまで健全に進んでいきます。

ざっくりいうと、少年たちは仲間を救出し、事件を解決するのですが、
詳細はぜひ本書をお読みくださいね。


さて、ここからが、今回のテーマに関わる本題です。

この物語では、少年たちのエピソードだけでなく、
ふたりの大人の存在 が、大切な要素になっています。

ひとりは、寄宿学校の監督をするベック先生。
先生は正義を重んじる人で、子どもたちに信頼され、尊敬されています。

もうひとりは、廃車になった列車車両に住んでいる謎の男性で、
子どもたちは「禁煙さん」というあだ名で呼んでいました。
子どもたちは、正しいか正しくないか判断できない事態では、
「正義の人」よりも、「禁煙さん」を相談相手に選ぶのです。

禁煙さんは、子どもたちの話に対等な立場で耳を傾けます。
そして、彼らがより適切な判断ができるようにアドバイスをするのです。
裁くことなく、偉ぶることなく、
さりげなく子どもたちをサポートします。

一方、「正義の人」であるベック先生。
彼は、今回のトラブルに際して
「無断で寄宿舎を抜け出す」という禁止行為に及んだ子どもたちを
きちんと規則に乗っ取り罰を与えます。
でも、その「罰」のなんとあたたかく、素敵なこと!
毅然とした、しかし柔軟な、見事な大岡裁き。
真剣に語りかける先生の言葉は、子どもたちの心に刻まれ、
「ぼくは先生のためなら首をくくられてもいい」と言わしめるほどでした。

物語の後半は、
この事件から派生した、少年たちの葛藤や悩み、無謀な挑戦や成長などが描かれていきます。
ここでも、ベック先生と禁煙さんの存在が、とても味わい深いのです。

大人になった今・・・

さて、
子供の頃に、「飛ぶ教室」を読んだときに
「そうだ、ぜったい、子ども時代を忘れない大人になろう」
と、私はきっと決心したはず。



そして大人になり、
私はすでに50を過ぎました。

私は、あの頃「こうなりたい」と願ったような大人に、なれたのだろうか。

 

「なれた」と言えるほどの自信はないけれど、
いま一度、「こうなりたい」という理想を見つめ直したい。
子ども時代を忘れず、
それでいて大人の品格と知性を持ち、
出すぎずに、子どもを支えられるような大人に。
今からでも、いくつになったって、人は成長していけるはずだから。

「飛ぶ教室」は、
子どもだけでなく
大人にこそぜひ勧めたい名著です。
ぜひ、読んでみてくださいね。

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