心の闇も味方に:ルイーズ・ブルジョワのアートが教える自己受容の力

悩みや辛さを抱えたまま、なんとか毎日をやり過ごしている。そんな経験はありませんか?

誰かに話しても解決しないし、感情をどこに向けていいかわからない…。

私もそんな経験があります。でも、最近訪れたルイーズ・ブルジョワの美術展で、そんな気持ちを共有できる友人に出会えたかのような気持ちになりました。

美術展なんて興味がない、と感じるかもしれませんが、ブルジョワの作品はただ美しいだけのアートではなく、私たちが日々感じている心の痛みをそのまま形にしたものなのです。

彼女は、自分の悩みや痛みを率直に造形化し、それを受け入れることで、前に進む力を見つけ出しました。その姿勢は、誰にでも通じる普遍的なメッセージです。

この記事では、ブルジョワのアートを通じて、あなたが抱える悩みや生きづらさを少しでも受け入れ、軽くするヒントをお伝えしたいと思います。

ルイーズ・ブルジョワ展

ルイーズ・ブルジョワは、六本木の屋外に設置されている巨大な蜘蛛の彫刻が有名な女性アーティストです。

彼女の大規模な回顧展が、東京:森美術館で開催されており、先日、観覧してきました。神戸から新幹線での日帰りでしたが、本当に、行ってよかったです。

今回の美術展でも、蜘蛛の作品が数点展示されていました。異様な迫力があり、威圧的な存在感に圧倒されました。

でも、その裏にある作者の思いを知るにつれて、作品に込められた深い感情が胸に迫ってきました。

彼女は、どぎつい恐ろしいイメージで、見る人を驚かせたかったのではありません。自分の中にある暴力性や闇をも隠さず表現することで、自分の苦しみや悩みを受け入れ、生き抜いてきた人なのです。

痛みと葛藤を表したアーティスト:ブルジョワ

ルイーズ・ブルジョワは、フランス出身のアーティストです。

彼女のアートは、ただ美しさを追求するものではなく、心の奥底にある悩みや葛藤をそのまま形にするもの。彼女は、精神分析に影響を受け、自分自身を見つめ直し受け入れるための手段として、アートを活用していました。

彼女の幼少期は、父親の不倫や家族との緊張関係に悩まされていました。

母を亡くした際には、失意のあまり自殺を図り、危うく救出されました。

感情的な負担に苦しんだブルジョワは、父の死を契機に、精神分析を受ける決意をしました。

約30年にわたる精神分析で、彼女は自分の内面を探り続けました。そして、ブルジョワはアートを通じて、自身の感情を解放し、言葉では説明できない痛みや混乱、トラウマを表現したのです。

それでは、ルイーズ・ブルジョワの作品の中から、私が特に心に残ったものを、いくつかご紹介します。

家出娘

「家出娘」は、ブルジョワにとって重要なテーマでした。

不安げな、心細そうな少女は、ブルジョワ自身だと言われています。

手に持っているのは小さな荷物だけ。頼りなげな足取り。その足元は、頑丈な大地ではなく、波の立つ水面のように見えます。

それでも彼女は、まっすぐ前を見据えて、進んでいるのです。不思議な勇気を与えてくれる作品です。

蜘蛛

蜘蛛は、ブルジョワ自身の母親を象徴していると言われています。また、母となったブルジョワ自身の、母性の象徴でもあります。

糸を紡ぎ、家族を守る存在としての母。でも、巨大な蜘蛛のイメージは不安感を抱かせ「何かあったらただではおかない」という暴力性も感じさせます。

自身の中にもある、複雑さや恐ろしさを、率直に表現した、凄い作品だと思います。

今回の展示では、周囲の壁にブルジョワの言葉が映し出されており、「皆いなくなった」などの、彼女の不安や怖れがひしひしと迫ってきました。

「地獄から帰ってきたところ、言っとくけど素晴らしかったわ」

淡い色調の端正な刺繍の作品。でも、刺繍で表されたその言葉は強烈です。

このフレーズに象徴されるように、彼女は自身の苦しみや試練を肯定的に振り返ります。

「地獄のような体験を通じてこそ、自分自身の真実を見つけることができた」と語るブルジョワの姿勢は、私たちに深い示唆を与えます。

この作品に使われた布は、夫の遺品だそうです。自身の歩みを静かに振り返りながら、針を進めているブルジョアの姿が浮かんでくるように感じました。

昇華

作品のタイトルは「トピアリーⅣ」。トピアリーとは、綺麗に刈り込まれ成形された樹木です。

少女が樹木となり、実をたくさんつけています。この人物は、ブルジョワ自身でしょう。

青い実に交じって、一部に黒い実があるのがわかるでしょうか。黒い実は、腕が裂けた傷口から実っています。

今でも彼女の傷は、癒えてはいない。でも、きっと彼女は、その傷もまた自分なのだと、受け入れているんじゃないでしょうか。

痛みと共に生き抜いてきた、清々しさ。彼女の、いのちの豊かさが伝わってくる作品でした。

また、この作品からは、老年に達した力強さと共に、少女の頃の心細さが、今なお彼女の中にあることも感じました。

ブルジョワのアートが教えてくれること

いかがだったでしょうか。

ルイーズ・ブルジョワの作品や彼女自身の生き方は、私たちに一つのことを教えてくれます。それは、悩みや痛みを避けるのではなく、それを認め、受け入れることができるということです。彼女は、自分の内面の混沌や葛藤を、アートという形で外に表現することで、少しずつそれと向き合い、折り合いをつけてきました。

無理にすべてを乗り越えようとする必要はありません。時には、心の中にある痛みや悩みをそのまま受け入れ、ただそこにあることを認めるだけで、心が少し軽くなることもあるのではないでしょうか。

ブルジョワが自身の苦しみをアートに変えたように、私たちも自分のペースで、心の中の痛みと付き合いながら、前に進んでいけるのだと思います。

アートの力を取り入れる

アートを用いて自己と向き合い、昇華させることは、ブルジョワのような才能あるアーティストだけの特権ではありません。

私たちも、アートの力を取り入れて心の重荷を軽くすることができるんです。

当ブログでは、自分自身の心と向き合うためのアート・セラピーについてご紹介しています。参考にしていただければ嬉しいです。

 

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