
テニスプレイヤーの大坂なおみさんが、全仏オープンの試合を棄権し、しばらくコートを離れると発表しました。
3年前から、うつの症状に苦しんでいたとのこと。
衝撃的なニュースでしたよね。
スポーツ界では、多くのアスリートが精神的不調に苦しんでいるそうです。水泳のイアン・ソープ、サッカーのイニエスタなど、スポーツに疎い私でも知っているような活躍をしているトップアスリートたちが、うつを発症したり、依存症になったりしているとのこと。
いったいなぜ、そんなことになってしまうのか。
この問題を、「人間性心理学」の観点から、お話したいと思います。
「自己不一致」という状態
大坂なおみさんをはじめとして、多くのアスリートが陥るのは、「自己不一致」という状況ではないかと思います。
「自己不一致」とは、つまり、「こうありたい自分(自己概念)」と「現実」が、一致していない ということです。

アメリカの臨床心理学者、カール・ロジャーズは、自己概念と現実の食い違いが、精神的な問題の原因となりやすいと述べています。
自己肯定感やポジティブな自己イメージを持つことは大事なんだけど、行き過ぎるとまずいよ、ということですね。
弱さを認められない・・・

トップアスリートたちは、日々の苦しいトレーニングに耐えて、自分を高め、成果を上げてきました。
その中で、強い自分という内面のイメージが、強固に作り上げられていきます。
だけど、人間なんだから、本当は、弱さも持っています。また、人生のすべてを自分でコントロールすることができる人はいません。
それなのに、才能と努力で夢を実現させてきた実績があるがために、自分の弱さを認めることが難しくなってしまっているのだと考えられます。
「強く、なんでも自己コントロールして勝利する自分」という自己概念と、現実とのギャップ。
これが大きくなっていくと、心や行動に問題が現れてきます。そして、うつなどの気分障害や、依存症などの精神疾患へと進行してしまうのです。

自己不一致は、誰でもある
トップアスリートならずとも、自己概念と現実との不一致に悩むのは、誰もが経験することでしょう。
いや、不一致に悩んでいるという人は、自覚がある分、むしろ問題解決に近づいていると言えるかもしれません。
自己不一致に気づくこともできないという場合もあるのです。
私自身も、ずっと自分を「明るく、前向き」だと信じ込んでいたんですよね。でも、自分の中に、クヨクヨ、ウジウジした自分もいるということに気づいたとき、大きな開放感を味わうことができました。
この経緯については、よかったら、以下の記事をご覧ください。
では、自己概念と現実とを一致させるには、どうすればいいのでしょうか。
気づき、受け入れること
それには、まず、自分の心の状態に気づくこと。
そして、ありのままの自分を受け入れることです。
こんな自分は駄目だ駄目だと批判しても、よい方向に進むことはないのです。

ロジャーズは、自己回復力を信頼し、ありのままを受容することが肝要だとして、「来談者中心療法」によるカウンセリングを創始しました。
来談者中心カウンセリングでは、カウンセラーは診断や指示をすることなく、ひたすら傾聴します。クライアントは、共感的に話を聴いてもらうことで自己への気づきを得、自らの力によって癒されていくのです。
現在は、カウンセラーやセラピストの多くが、基盤には、この「来談者中心」の考え方を置いていると言ってもいいでしょう。

私の場合は、絵を描くことが、気づきと受容を助けてくれました。
絵が教えてくれた自分との出会いがなければ、今の私はありません。当時は心理療法のことなど何も知りませんでしたが、アートを介して自分を知り、自分へのセラピーをやっていたことになります。
気づくためには・・・
気づくことなしには、癒しへの旅へ踏み出すことはできません。
しかし、普通の生活の中で自己概念に気づくことは簡単ではありません。だから、そこで助けになるのがカウンセラーに相談することだったり、アートを使うことだったりするのです。
アートセラピーでは、自分とカウンセラーが対峙するだけでなく、自分について教えてくれる3人目の存在として、アート表現を用います。
アートセラピーに関しては、こちらもご覧ください。
もし関心がおありでしたら、コメント欄から声をかけてくださいね。
大坂なおみさん、そして、人知れず苦しんでいる多くの方にとって、今日という日が心安らぐものになりますように。

「理想と現実のギャップ」に関して、よかったら、こちらの記事もご覧ください。

