
先日、大阪市立美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展」に行ってきました。
そこで出会った1枚の絵をご紹介します。
周囲の無理解の中を、強い志を持って生きた、一人の女性の自画像です。
決意を持って生きた女性、ヴィレール

マリー・ドニーズ・ヴィレール作(1801年)
「マリー・ジャゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ」
一心に何かをみつめ、絵を描く一人の女性。その強いまなざしに、ひきつけられました。この女性は、絵の作者であるヴィレール自身だと言われています。
背後の窓からは、仲睦まじいカップルらしき二人が見えています。
その光景に背を向け、彼女は絵に向かっています。背筋をピンと伸ばした姿勢にも、彼女の強い意志が現れているように感じます。
当時は、女性の職業画家が現れ始めた時代でした。しかし、男性優位の芸術家ワールドの中で、女性が絵を本格的に学び、それを生業とすることは、簡単なことではなかったはず。
絵の道を選ぶということは、「世間並みの女性の幸せ」のようなものを捨てるという、相当な覚悟が必要だったのではないでしょうか。
この絵は、家庭におさまって男性の庇護のもとに生きるのではなく「画家として生きていくんだ」という、彼女の独立宣言のようなものだったのではないかと思いました。
無理解の中で、思いを貫く

実はこの絵、長い間、別の著名な男性画家の作とされていたのだそうで、
この絵がヴィレールの作品だと認定されたのは1996年のことだったそうです。
なぜ、彼女の作品だということが知られなかったのか。それは、簡単に言うと、女性蔑視の風潮のせいですね。
女性がこんな優れた絵を描くはずがないと思われたり。
男性の作品だということにしておく方が売れるという画商の判断があったり。
というような諸々の事情があったのだろうと言われています。
彼女に限らず、女性の芸術が正当に評価されることは難しかったのです。
彼女は、自分の作品が、他の人の作だとされてしまったことを、知っていたのでしょうか・・・。
絵に問いかけられて

厳しい時代を、自分の意志を貫いて生きた女性、ヴィレール。
彼女の姿に接して、私は、「あなたは?」と問いかけられたような気がしました。
私も、彼女のように、「私は、私の思いのままに生きた」と言えるような私でありたい。そんな、背筋が伸びるような想いになりました。
ぜひ、あなたも彼女に会いに、「メトロポリタン美術館展」に足を運んでみてくださいね。
この作品だけでなく、そうそうたる名作ぞろいの、とても見ごたえのある展覧会です。よかったら、あなたの感想も、聞かせてくださいね。