箱庭:自己の変容をアートで知る

自分で自分の心の状態を知るというのは、案外難しいものです。人から「大丈夫?疲れているんじゃない?」なんて言われて「えっ?」と驚いたり・・・そんな経験はありませんか?

自分の心の状態を知るためのおすすめの方法が、アート表現です。顔の表情に「心」が現れるように、アートには、「今の私」が自然に表れてくるんです。

今回は、さまざまなアート技法の中から「箱庭」をご紹介します。

箱庭とは

箱庭は、人気のある心理療法の技法です。ユング派の分析家、河合隼雄さんが「これは日本人には合う」として心理療法の中に取り入れて以来、広く行われ研究されてきています。

砂を入れた箱の中に、「これ」と思うミニチュア玩具を置いていくだけなので、通常のアートセラピーでは「下手だから」などと抵抗する人でも気軽に取り組みやすいのが利点のひとつです。

非言語的な表出・表現によって自己の内面が「見える化」され、たとえ言語的なやりとりがなくても「治っていく」効果があるとされます。

私は月1回ペースで、自分の心のメンテナンスのためにカウンセリングを受けていまして、その際、ときどき箱庭を作らせてもらっています。「私って今こんな感じなんだ」というのを見るのは、とても面白いです。

これまでに作った箱庭に関する記事も、よかったらご覧ください。

私の箱庭(2023年2月)

最近取り組んだ箱庭が、こちらです。

私は毎回、必ず砂をかき分けて「川」を作りたくなります。全く水場のない作品は、作ったことがないです。何か私の基本的な在りように関係しているんだろうと思います。

 

今回は、この「埴輪くん」を置くところから始まりました。ペンギンと猫(?)が訪れて、何かお伺いを立てている感じです。

 

私は「祭礼の場」みたいなものをつくることも多いです。
今回の作品ではもう一か所、特別な場所が設置されています。手前のスペースに大きなランプがあって、茂みに囲まれ隠されているイメージ。

箱庭から見えてくる「私」の内実

たいてい、私の箱庭は、「何か特別なアイテムを探したり謎解きをしたりしながら、旅をしている」というストーリーになります。

そうと決めて作り始めるわけじゃないんですけど、毎度、そういうお話になっちゃいますね。

たぶん、私は「心の世界」の探求が好きだし、「使命」とか「人生の目的」みたいなものを希求する気持ちも強いので、こういうストーリーに心惹かれるんじゃないかなと思っています。

今回の「旅人」は、こちら。
「レゴ」用の人形です。改めて今見ても、これ、強そうでもないし賢そうでもないですね。すごく能天気でお気楽な旅人って感じです。

川を進んでいってますが、川はそれほど深くもなく、危険が潜んでいる様子も今のところない、というイメージです。

この旅人が「今の私」であり、この旅が「人生の歩み」みたいなものなんだろうと思うのですが、以前の箱庭と比べると、ずいぶん肩の力が抜けて、気楽になれたなあと感じます。

「祭礼の場」に「ご本尊」的な感じで置かれた「埴輪」も、あんまり物々しくないですよね。この埴輪の言うことに自分を全面的に預けようとは思えない。「参考までに意見を聞いとこうか」くらいの感じで、ちょっと違う視点からの考えを取り入れにいくくらいのスタンスでしょうか。

私の箱庭(3年前)

これは3年半ほど前の箱庭です。

「旅人」的な存在は、ウミガメだろうと思うんですけど、今見ると、進むのをためらっているような印象です。行く手には、なんだかいかつい、怖そうな奴らが待ち受けてますし・・・。

ちなみに、当時の私は、客観的に見て、何か深刻な問題や困難を抱えていたわけではありません。でも、何かしらの不安とか心配を感じていたんでしょうね。
とはいえ、作った当時は、これもまた「以前の私よりもずいぶんゆったりとしたかまえになったなあ」と感じた箱庭だったんです。

年々、少しずつ、「自由で気楽な私」に変わっていく、そんな過程なのかなと思います。

「今の私」の内実が現れるアート

箱庭に限らず、アート表現には「今の私」が自然に現れ出てきます。

旅で出会った風景やおいしい食べ物の写真をたくさん撮っている人、友達と写した記念写真を撮りためている人は多いと思いますが、そのような「現実の写真」以上に、アートで「今の私」を記録しておくことは、しみじみと味わい深いものではないでしょうか。

平面の手軽な箱庭:コラージュ

ところで、箱庭って、作ること自体のハードルは低いんだけど、大量の玩具を常備していないとできないので、個人が自宅でやってみるというのは、まず無理。

カウンセリングルームでは、箱庭の設備を置いている施設が多いと思いますので、お問い合わせの上、やってみてはいかがでしょうか。

場所と料金の面で、箱庭に手を出すのは難しいという場合は、「コラージュ」がおすすめです。コラージュは、「持ち運べる材料で箱庭的なことができたら」というアイデアで心理療法の場で用いられるようになったという経緯があります。

コラージュについては、いくつか記事を書いていますので、よかったら合わせてご覧ください。

 

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