語り得ぬ思いを絵で語る:ビジュアル・ナラティヴ

「ビジュアル・ナラティヴ」をご存知ですか?

「ナラティヴ」は、「語り」のこと。「ビジュアル」はもちろん「視覚」。つまり、「ビジュアル・ナラティヴ」は、「視覚で語ること」です。

言葉では表しにくかったり、伝えにくかったりするものを、絵などを使って表現する「ビジュアル・ナラティヴ」。もしかしたら、あなたの心のモヤっとしたものをはっきりさせてくれる方法かもしれません。

なぜ、絵で語るのか

自分の体験や想いを、言葉だけでなく、絵などの画像を使って伝えている人は、たくさんいます。例えば、本屋には、たくさんのコミック・エッセイが並んでいますね。

なぜ、絵を使うのか。
それはもちろん、「言葉よりも伝わる」からです。

「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、「目で見れば、直感的に伝わる、わかる」ということは、皆さんも経験的にご存知だと思います。

例えば、「悲しい」という言葉だけで語るよりも、
絵の中の登場人物のうなだれた姿や沈んだ表情、雨雲に被われた空や重苦しい色・・・などを見れば、その悲しみは、より深く心に迫ってきます。

絵で語ることの利点とは

心理学者のやまだようこさんは、いろいろな心のありさまを「イメージ画」を描いてもらう方法で研究している方です。
やまださんは、イメージ画を用いる利点について、次のようなことを挙げています。

・知的な説明よりも本音が現れやすい。
・見たときに、瞬間的に全体を把握できる。
・複雑な関係性や思想を、ひとつのまとまりとして表せる。
・包括的にも、部分的にも、細分化した形でも表せる。

上記は、いくつかの書籍や論文にやまださんがお書きになったことを自分なりに理解してピックアップした項目ですが、
この中で私が特に注目したいのが、

知的な説明よりも本音が現れやすい。

というところです。

つまり、言葉では、意図的に隠したり、カモフラージュしたりできるけど、絵には、知らず知らずのうちに本音が出ちゃうということですね。

声にならない言葉が、絵に現れる

本音が出るなんて言われると、「絵って、こわっ・・・!」って気がしてしまうかもしれませんが、
「誰から見てもわかるような状態で秘密が暴露される」ってことは、そうそうないので、ご安心ください。

トレーニングを積んだ心理学者やセラピストは、「こういう心理状態の人はこんな表現をする傾向がある」という知識を持ってはいますが、それはあくまでも「傾向」にすぎません。絵の意味に唯一の正解をあてはめることはできませんから、「絵を見たらすぐに心の内が読める」なんてことは、ないです。

ただ、もしも、心の内を語りたくても語れない、そういう状態になっているとしたら、絵を通じてなら、語ることができるかもしれないということなんです。

語ろうとしなくても思いが現れるのが、絵の特質だから、無理に「話をしよう」とする必要がないのです。

描かれた絵が、声にならないSOSとして誰かに届き、支援の働きにつながることもあります。

1995年の阪神淡路大震災では、子どもが描いた「黒い虹の絵」が新聞などで報道され、この絵によって、元気そうに見えても子どもたちが大きな心の傷を負っていることが明らかにされました。そして、子どもたちの心のケアの必要性が注目される契機となったのです。

絵を通じて対話する

絵を描き、その絵をながめて、自分と、または誰かと、対話を始める。それは、「本当の自分の声」を聴く機会となります。

絵を描くときには「なんとなく描いただけ」「描いてみたら、こんな感じになっちゃった」という程度の意識なんですけどね。

上手い絵である必要は全くないのです。むしろ、うまいと、うまさだけが前面に出ちゃって、思いが隠れてしまうことさえある、と私は思います。

まとめ

今回は、絵を通じて想いを語る「ビジュアル・ナラティヴ」についてお伝えしました。さらに詳しいことをお知りになりたい方は、以下の本が読みやすいと思います。

「ナラティヴとケア09:ビジュアル・ナラティヴ—視覚イメージで語る—」
 やまだようこ編 遠見書房 2018年

あなたも、絵を描き、その絵を眺めながら対話する、そんな経験をしてみてはいかがでしょう。

でも、これを自分ひとりでやるのは、なかなか難しかったりもします。よかったら、「ビジュアル・ナラティヴ」体験、私と一緒にしてみませんか。

関心を持たれた方は、「お問い合わせ」からお気軽にどうぞ。

 

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