箱庭療法:見ること、触れることで、心が動く

 

箱庭療法ってご存知ですか?

心理療法の世界では広く活用されているのですが、

要するに、砂を入れた箱の中に、人形とか家とか樹木だとかのミニチュアを置いて、思いついた世界をそこに表現していくものです。
言葉にならない思いが表出され自己治癒力が働き出すものとして、幼い子どもから高齢者まで、対象を問わず取り入れられています。

今回は、「ミニチュアを置くだけで心が動く」その不思議な世界についてお話します。
「こころ」に関心のある方は、ぜひ読んでみてくださいね。

ミニチュアを置くだけで、心が「治る」不思議

私は箱庭を、制作者として経験したことが何回かあるんですけど、

単純に、なんとなく選んだものを、なんとなく置くだけのことなのに、
不思議なくらい、心が動くんですよね。

私の箱庭制作に関する記事は、こちら

普通、心理療法とかカウンセリングは、言葉のやり取りが中心になりますけど、
箱庭では、一言も話すことなく治っていくことも珍しくないそうです。

ミニチュアを置くだけで心の健康が回復していくなんて、不思議ですよね。いったい、そのとき心にどんな体験が生まれているのでしょうか。

最近、「箱庭の治癒力とは何なのか」に関する本を読んで、とても興味深かったので、今回はそれをご紹介したいと思います。

箱庭の治癒力の秘密とは?

「箱庭療法の治療的仕掛け——制作者の主観的体験から探る」石原宏 創元社2015年

著者は箱庭療法の専門家で、臨床心理士の方です。

箱庭は、砂と、内側が青く塗られた木箱と、たくさんのミニチュアを使って、すきなものを表現していきます。通常は、思いのままに何個でもすきなようにミニチュアを使っていいのですが、

この本では、研究のために「1個だけ置いてください」という指示をして、箱庭制作をしてもらっています。もちろん研究参加者は、精神疾患の治療を受ける患者ではなくて、健康な成人です。

箱庭制作を終えたあと制作者にインタビューをしたところ、「たった1個を選んで箱の中に置く」というだけなのに、実に豊かな心の動きが起こっていることがわかりました。

例えば、選んだアイテムを置く位置や向きによって、制作者の感じる心の情景が、全く違うものに変わってしまうんです。

ミニチュアの向きが変わるだけで心が変わる

ある人は、ピアノのミニチュアを、砂箱の中央から少し脇に寄った位置に、斜めに置きました。

そして、「波打ち際でピアノを弾いている」というイメージが生き生きと心に浮かんでいました。ピアノの音までも聞こえてくるような気がするくらいだったのです。

ところが、試しに、ピアノの向きを斜めではなくまっすぐに置き直してみたとたん、彼女は「弾いている人が消えた」という感覚を味わったのです。

そこに置かれているのはピアノだけなので、もちろん物理的にはそもそも人はそこにいません。でも、斜めに置いていたときには、そこに人がいて演奏している気配を感じ、ピアノの音色までも聞こえていたのです。その豊かなイメージは、ピアノの向きを置き換えただけで、一瞬にして消えてしまったというのです。

左右の位置が変わるだけで心が変わる

また別のある人は、この人もまたピアノをひとつ置いたのですが、「どこまでも広がっていく海辺」のイメージが浮かび、「開放感がある」と語っていました。

ところが、ピアノを左側に置き換えてみたところ、その「開放感」がなくなってしまったのです。不思議なことに、右側に置いたときには、箱の木枠のすぐそばに置いたときでも、木枠などないかのように広々とどこまでも風景が続く感じを味わっていたのです。

物理的には、ピアノを左に置こうが右に置こうが、砂箱の木枠は厳然と存在します。それなのに、左右を置き換えるだけで、心の中の体験は大きく変わってしまうのです。

単なる「モノ」が心に及ぼす力

ここで言われていることは、「斜めにおくことと、右側に置くことは、イメージを豊かにする働きがある」ということではありません。これは、この制作者の個人的・主観的な体験。「こう置いたときは必ずこう感じる」という法則がある、という話じゃないのです。

ほんのわずか、位置、向きが変わるだけでも、単なる「モノ」が、こんなに心の世界に変化を生み出すものなんだ。ということです。

私自身の箱庭体験でも、「じゃあ試しに、この人形を、こっちに動かしてみましょうか・・・」と言われたとき、強烈に「ダメダメダメ、絶対やめてっ!!」と、ものすごい抵抗感を感じたことがありました。

砂箱の中に表現された世界と、自分の心は、確かに連動しているのです。

だから、心の有り様が変われば箱庭の世界も変わるし、箱庭の世界が変わって行けば心の世界も変わる。その変化は「どちらが先か」となると、「タマゴとニワトリ」論議みたいな話でわかりませんが、とにかく、箱庭はただの箱、ただのミニチュア玩具という物体ではなくなるんですよね。

箱庭体験のすすめ

箱庭療法に興味を持たれた方は、ぜひお近くのカウンセリングルームに尋ねてみてください。多くのカウンセリングルームがそれぞれ箱庭を持っていて、体験することが出来ると思います。

「カウンセリング」っていうと、相当深刻な問題を抱えている人だけが行くところと思われがちですが、もっと日常使いをしたらいいと思うんですよね。「心のデトックス」って感じで、気楽にお使いになったらいい。

ただ、健康保険扱いにならないから、費用が高いのが難点ですね。でも、エステとか美容院とか、外面のメンテナンスだったら、わりと皆さん抵抗なく出資するじゃないですか。その感覚で、内面のメンテナンスに投資されたらいいんじゃないかと思います。

カウンセリングについては、こちらの記事もよかったらどうぞ。

形や色(アート)の力

私は、色を塗るとか絵を描くとか、素材や画材に触れて表現することと、心の動きの関係に、とても関心があります。

箱庭に限らず、色や形を操作することは、心の動きとつながっていると思っています。
そして、素材に触れること(=アート)は、知らず知らず心の健康を回復させていく不思議な力を持っていて、それをもっと生活に生かしていきたいのです。

そんな「アートの力」を一緒に楽しみ、経験してみませんか。関心を持ってくださった方は、ぜひ声をかけてくださいね。「問い合わせ」ページから、よろしくお願いします。

アートで心を癒す「アートセラピー」について、こちらの記事もぜひどうぞ。

 

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