「もう一人の自分」と出会う物語「夢見る水の王国」

あなたは、怒りや憎しみ、寂しさなどの負の感情も、自分のものとして受け入れることができていますか。

 

明るく生き生きした面ばかりではなく、だれもが、影の部分を抱えて生きています。
その「自分の影」を、「これも自分なんだ」と、受けとめること・・・
これは案外、難しいことだと思います。

社会に適応していくために、感情を押し殺したり、考えないようにしたりしなくちゃいけないことは多いですし、
自分ひとりの内面の問題だけ考えても、ネガティブな感情と向き合うのはつらく、目を背けたり、なかったことにしてしまったり・・・

今回は、無視してきた自分の「影」との統合の物語、「夢見る水の王国」をご紹介します。

「夢見る水の王国」ストーリー

 

「夢見る水の王国」(上・下) 尞美千子  角川書店

 

いくつもの世界、いくつもの人生、過去と現在と未来が重なり合う、幻想的な物語です。

 

祖父と海辺の町で暮らす少女マミコは、海岸で木馬を見つけたのをきっかけに、異次元の世界に迷い込みます。
静止した世界で、自分の影が立ち上がり、分身「悪魔の子マコ」が誕生します。それと同時に、少女は自分の名前も人生の記憶も、すべてを忘れてしまうのです。

 

マコは、「あんたは嘘つきで、痛いのに痛いって言わない、悲しいのに悲しいって言わない、あんたが嫌いだ」と言い放ちます。そして、「世界の果てに、あんたの名前を捨てに行く」と宣言して逃げ去るのです。
少女はマコを追いかけて、木馬と共に自分を取り戻す旅をしていく・・・というのがメインストーリーです。

 

ここに、少女マミコの母や、祖父、飼い猫など、彼女を取り巻く存在のエピソードと、
異世界の存在である鉱山の老人、砂漠の少年、月の神殿の神官などの、たくさんの人々のエピソードが次々に現れ、展開していきます。

幻想の光に導かれて・・・

キラリと光っては、すぐに姿を消すような物語進行が、まるで万華鏡のよう。

初めはとりとめのないバラバラなものに思えて、上巻の半分くらいまでは「なんじゃこりゃ?」って感じですが、
謎の断片が、進むにつれて重なり合ったり、解きほどかれたりして、神話的なまとまりをもったものになっていきます。

後半は、めまぐるしく場面を変えながらも怒涛の展開!圧倒的なパワーを持った物語です。

 

 

読み終えた後、暗闇にキラキラ輝くような、不思議な余韻が残ります。

心の旅

 

影との統合。
異世界への心の旅。

ぜひあなたも、味わってみてください。

特に、ユングの唱えた「元型」や、「アクティブイマジネーション」をご存知であれば、いっそう興味深く読めると思います。

ユングについては、またいずれ取り上げたいと思います。

 

「夢見る水の王国」、お勧めです。
作者、尞美千子(りょう みちこ)さんは、泉鏡花文学賞を受賞した作家だそうで、他の本も読んでみたいです。

 

ほかの「自分探し系」おすすめ本について、こちらの記事も、よかったらご覧ください。

 

 

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