子ども時代の「ワクワク」を思い出したいときに:「おおきなきがほしい」

 

「〇〇だったらいいのにな」と想像すること、大人になってから、ありますか?

「お給料が上がったらいいな」「もう少し広い家に住みたい」などの、現実生活の向上に関する願望や、「温泉に行きたいな」などのプランだったら考えるでしょうけど、想像を広げてあこがれる楽しさは、大人になったら、なかなか味わえないんじゃないでしょうか。

今日は、子どもの頃の「ワクワク」を思い出させてくれる絵本「おおきなきがほしい」をご紹介します。

絵本「おおきなきがほしい」

 

「おおきなきがほしい」文:佐藤さとる 絵:村上勉 偕成社 1971年

 

「おおきなきがほしい」は、ゴールデンコンビ、佐藤さとるさん、村上勉さんによる絵本です。この表紙絵を見れば、「ああ、あれね!」と、なつかしく思い出す方も多いのではないでしょうか。

 

このお話は、主人公の「かおる」が、「大きな木があるといいなあ」という夢をお母さんに話すところから始まります。
かおるは、「木登りができるような木が、自宅の庭にあればいいのに」というのですが、かおるの想像は、「木に登りたい」だけではなくて、もっと壮大かつ具体的なのです。

 

木の幹は、家族4人が一緒に囲まないと抱えられないくらい太くて、途中には「ほらあな」があいています。
ほらあなの中にははしごが設置してあり、ぐんぐん登っていくと、その上はツリーハウス。かおるは、三歳の妹が上がってくれるように、バスケットをハンドル操作するエレベーターまで考えています。

さらに上に登っていくと、リスや小鳥たちにも出会えますが、この木は「かおるの木」なので、かおるが彼らに「木を使わせてあげている」形です。

 

木の上まで上り詰めると、そこには見晴らし台。遠くの山や町が見えて、爽やかな風が吹き・・・と、かおるの想像についていくと、本当にワクワクしてきます。

 

そして後半は、ツリーハウスの中でかおるが季節の移り変わりを味わう様子が語られていきます。
「夏は涼しいだろうな」とか「秋には落ち葉が部屋に舞い込んでくるだろうな」とか「リスが遊びに来るかも」とか・・・。

 

「おおきなきがほしい」の魅力

この物語は、ありえない想像を楽しむ話ではあるんだけど、現実に根差した想像なんですよね。
想像っていうと、別の時空に行くとか、今の自分は仮の姿で本当は○○だ、みたいな、別世界礼賛のような話になりがちだけど、これは自分の生活と密着した想像の世界です。

今の自分が、今やりたい夢。そこがこのお話の大きな魅力だと思います。

 

そして、村上勉さんの絵の素晴らしさ!
柔らかく暖かな独特のタッチの絵が、想像の世界をリアルなものにしています。床板はちゃんと釘打ちされているし、台所のコンロはプロパンガスのタンクにつながっているし、冬のストーブは薪を燃やす達磨ストーブ!まさに見てきたように詳しく描写されているんです。

さらに隅々までじっくり見ると、「あっ、こんなところで、こんなことしてる!」っていう小さなストーリーが発見できます。たとえば、テーブルの上でリスがお菓子箱の蓋ををあけようとしていたり、壁をカタツムリが這い登っていたりするんです。見飽きません!

 

永遠の子ども心を育てる

 

物語の最後の方では、かおるは大きな木の絵を描いてお父さんに見せ、想像の話を聞かせます。それを喜んで聞くお父さんがまた素敵。

そして、お父さんとかおるは、ほんとうに木を植えるのです。大きく育つはずの木を。

 

おそらくこの木が大きく大きく育つ頃には、かおるは大人になって、もっと現実的な思考をするようになっているでしょう。かおるが思い描いたような巨木になるには何百年もかかるでしょうしね・・・。
でも、この木を見ればきっと、子どもの頃のワクワクした心を思い出せる。子どもの心を忘れない大人になれるんじゃないかなあと思います。

 

そして「木を植える」なんててことが叶わない私たちには、この絵本「おおきなきがほしい」は、きっと役に立ってくれると思います。

 

残念な点:ジェンダー・バイアス

ただ、ひとつだけ、この本唯一の残念な点についても書いておきたいと思います。
それは、「木が風で揺れても平気だ」というところに「男の子ですからね」という説明をつけていること!「男の子は木登りで怖がったりしない、女の子は怖がるけど」っていう、ジェンダー・バイアスですね。まあ、出版が1970年、もう50年前ですから仕方ないなとは思いますが・・・。ここだけ改訂するって、できないもんなんでしょうか?

子どもの頃のワクワクを思い出そう!

子どもの頃のワクワク感を思い出したいときに、絵本「おおきなきがほしい」、おすすめです。
子ども時代に読んだことがある方はもちろん、初めて読む方でも、一気に子ども時代に戻れますよ!

 

ストーリーをかなり詳しくお伝えしましたけど、絵と文のコラボレーションから伝わってくるすばらしさは、実際に見なくちゃわからないので、ぜひ手に取ってみてくださいね。

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