あなたは、何か不愉快なことがあったとき、自分の心の内側に向き合うことができていますか。
自分がどんな気持ちなのか、どんなことを感じているのか、本当に気づくことができていますか。

「本当に気づく」って、実は意外と難しいことなんですよね。
でも、「本当に感じていること」=「実感」に触れることこそが、
心の健康の鍵 なんです。
今回は、この「実感」に迫る心理療法、「フォーカシング」をご紹介します。
「実感」を詳しく探ってみる
実感。
なにか、気がかりな出来事があったときって、からだに何かの感覚が起こることはないですか?
心臓がドキドキするとか、汗をかくとか、生理的な変化が起こる場合もありますが、
もっと何か、重いとか、硬いとか、冷たいとか、そういった感覚がからだに起こることってないでしょうか。
精神的なものなんだけど、身体の感覚として知覚できるもの。
心と身体の境界にあるような、内面の体験。
こんな感覚を、著名な心理療法家ジェンドリンは、「フェルト・センス」と名付けました。

フェルト・センス
例えば、
最近、私は、初対面の人20人くらいの場で、自己紹介をする機会があったんですよ。
司会者から、自己紹介の中で「プチ自慢」をするようにという指示があって、
私は、何言おうかな~と考えた末に、自分のお産のときのエピソードを紹介したんですよね。たぶん珍しい経験なんだろうなというネタがあったので、インパクト強めで覚えてもらいやすいかなと思ったんです。(そのネタの中身は、今回の本題ではないので別の機会に…)
でも、会が終わってから、その話をしたことを、後悔しました。
もっと親しくなってからならともかく、初対面で、いきなりあの話はドン引きだよな~・・・・という気がしてきちゃったんです。
しばらく落ち込んで、ため息をついていました。

このとき感じたことを、言葉で表現するなら、「いやな気持ち」「後悔」「落ち込み」といったところでしょうか。
でも、本当は、一言で言い表せるようなものじゃなくて、実際はもっと複雑なものなんですよね。
もうすこしくわしく感じてみます。
身体の感覚でふりかえってみると、
みぞおち付近に、違和感がありました。
そこだけキュウっと凹んで、ねじるような、えぐるような力が、腸に向かっていくような感じがありました。
それと、「やっちゃった、やっちゃった」っていうエコーが、リピートしていました。
絵に描いてみると、こんな感じ。

ねじねじと回転しながら穴を掘って、潜っていこうとしている姿です。
しょぼんとうなだれた表情も出てきて、
「ああ、そっか、恥ずかしくて、穴を掘って隠れようとしているんだ」と気づきました。
名付けて「恥ずかしいちゃん」です。
フェルト・センスに「優しくする」
さて、この「フェルト・センス」を、「どんな感じがするかなあ」とじっくり探ってみて、
さあ、それをどうするか。
その「フェルト・センス」に「優しく接する」ということを、してあげてください。
フェルト・センスは、今まで目を向けてもらえなかった子どもみたいなものです。
嫌な気持ちって、あんまり味わいたくないから、「あー、もう考えないでおこう!」って、脇に追いやりがちじゃないですか。
棚上げしたり、奥に押し込んだり、「なかったこと」にしたり・・・。
自分の「実感」を探ることで、ようやく気付いてもらえた「何か」。
その「フェルト・センス」の傍に来て、隣に一緒にいることをイメージしてみてください。
「気づいてくれた」
「傍に来てくれた」
それだけで、心の中にあった気がかりは、解放へと向かい始めるんです。

私の今回のことでは、
心に浮かんできた「恥ずかしいちゃん」のイメージの横に来て、「あー、やっちゃったよね~」って、なでなですることを想像の中でやってみました。
そしたら、だんだん「まっ、いっか!」と、心が少し軽くなりました。

フォーカシングのステップ
なお、ジェンドリンが提唱した心理療法「フォーカシング」では、次のようなステップを説明しています。
➡ 「見出し」がぴったりかどうか、響かせる
(「へこむ」の方がいいかな。いや、「恥ずかしい」かな。・・・など)
➡ 問いかける(この「恥ずかしい」が、何か教えてくれるとしたら、なんだろう?・・・など)
➡ 受容(「ああ、そうか」と心に浮かんできたことを、受け入れる)
全ステップについて説明しようとしたら、かなりの長文になってしまうので、
今回は、「フェルト・センスの形成」の部分だけに絞ってお伝えしました。
「ちょこっとフォーカシング」ってところでしょうか。
でも、それだけでも、気分を回復させるのにずいぶん助けになるので、
いやな気分になったときには、ぜひやってみてください。
